USJでの集客戦略を構築するやり方のまとめ

USJでの集客戦略を構築するやり方のまとめ


USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演した、USJ復活の立役者、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)・森岡毅氏が著書の「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」の中で、自身が実際に使っている集客戦略立案の為のフレームワークを紹介しています。

ちなみに、フレームワークという言葉をWikipediaで調べると、「 経営戦略や業務改善、問題解決などに役立つ分析ツールや思考の枠組み。MBAなどで教わるビジネスに必要とされるロジカルシンキングや発想法などを体系的にまとめたもの」と解説されています。つまり、戦略や解決策に辿り着く為に、どういう順番で考えれば良いかという手順を説明したものがフレームワークです。マーケティング戦略の立案においても、SWOTだとか、Five Forcesだとかの有名なフレームワークが色々とありますが森盛岡氏もこうした既存のフレームワークやマーケティングの知識を土台に、自分なりの実践的なフレームワークを構築しているそうです。

森岡氏は「テーマパークは究極の集客ビジネス」、「集客アイデアの実験場」と言っています。ビジネスの基本は集客です。集客無くしてはどんなビジネスも成り立ちません。

森岡氏は集客アイデアを考え出す際に、以下の3つのフレームワークをよく使用するそうです。

  1. 戦略的フレームワーク
  2. 数学的フレームワーク
  3. マーケティング・フレームワーク

この本の中で主に解説されているのは、一番目の『戦略的フレームワーク』だけなのですが、これがとても分かりやすく、実践的で、ぼくも自分の仕事で集客の戦略を考えるときに活用したいと思いましたので、ココにまとめておきます。

戦略的フレームワークの解説

森岡氏は集客の良いアイデアを出すためには以下の2つをしっかりと考えることが大切だと言います。

  1. 良いアイデアとはどんな条件を満たすアイデアのことか?
  2. それらの条件を組み合わせて、良いアイデアを探すにあたっての着眼点をどこに定めて頭脳をフル回転させるべきなのか?

この2つを順を追って考えていくやり方が、森岡氏が使用する戦略的フレームワークです。

集客アイデアに到達するまでの流れ

アイデアに到達するまでの流れとしては、以下の順に考えます。
「目的」⇒「戦略」⇒「戦術」

目的=そもそも達成すべき命題は何か? ←解決すべき問題を最初に明確にすることが大切
戦略=目的達成の為の資源を何に集中するか? ←アイデアの範囲を決める必要条件
戦術=具体的にどのように実現させていくのか? ←集客のアイデア

まず、目的(目標)を明確にします。

次に、目的達成の為に、どの顧客層・市場に絞るのか、予算はどれくらい使えるのかなどの条件面を絞ります。森岡氏はこれをアイデアの(必要条件)と呼んでいます。マーケティングでは一般的に「ターゲット」とか「リソース」とか言っている内容をここで検討します。そしてここで決定されるのが、いわゆる、「戦略」というものです。

必要条件が決まったら、その条件にあてはまるアイデアは何かを考えます。森岡氏はこれをなぞなぞの答えを見つける感じだと言っています。

必要条件として「使うときに使わない」かつ「使わないときに使う」、これなーんだ?条件にあてはまる答えは「風呂のフタ」というのと同じです。

しっかりと必要条件が出揃えばあとは、なぞなぞの答えを見つけるように、その条件にあてはまるものを必死に考えれば、必ず答えが出てくるということです。そしてその答えが集客アイデアであり、これが目的を達成する為の「戦術」ということになります。

集客アイデア到達までのUSJでの例

この「目的」⇒「戦略」⇒「戦術」の流れを、USJを例にして考えると以下のようになります。

まず目的は「1000万人の年間集客を安定的に達成すること」。

次に、この目的を達成する為の条件(戦略)として正しそうなものを複数考えます。
これを戦略オプションと呼んでいます。

戦略オプション:
A. USJが昔から強い独身女性により多く来てもらう戦略
B. 未開発のシニア層を呼び込むための戦略
C. USJに来る頻度が低い地域を呼び込む戦略
D. 小さな子連れファミリーを獲得する戦略 ← UJSはこれが一番達成可能性が高いと判断

これらの複数の戦略オプションの中からUSJではDが最も達成の可能性が高いと判断しました。
これでターゲット層が明確になりました。

森岡氏の戦略的フレームワークではこの「小さな子連れファミリーを獲得する」という大きな1つの必要条件を、さらにもう1レベル噛み砕き、より具体的な必要条件を考えます。

つまり、「小さな子連れファミリー」というターゲットを獲得する為の必要条件をさらに考えます。

そして、以下の4つの必要条件が出てきました。

  1. 「小さな子供連れは楽しめない」という消費者のパーク全体に対する認識を強く覆すものでなくてはならない。
  2. 実際に数割増えるであろう集客に十分に大きな収容キャパがなくてはならない。
  3. 設備投資資金の予算内で実現できるアイデアでなければならない。
  4. 既存資産とのプラスの相乗効果で経営効率を高めるアイデアであれば尚良い。

そして、これらの必要条件にあてはまるものとして、「ユニバーサル・ワンダーランド」という具体的なアイデア(戦術)に到達しました。

それ以外のこと

戦略的フレームワークの流れは上記の通りですが、それ以外にも本書でちょこっとだけ触れられていたことがありますので、覚書的に記しておきます。

目的の設定には「数学的フレームワーク」を使うそうです。数学的フレームワークでは需要予測モデル、重回帰分析による因子解析などを使うそうですが、本書では詳しく説明されていません。要するに数学的に市場調査をして目的を定めていますという意味でしょう。

「マーケティング・フレームワーク」についても本書では説明がありませんが、一般的に知られるSWOTとかFive Forcesなどのフレームワーク、もしくはもっと広告的なことかもしれません。

「リアプライ」や「ストック」という言葉も少し出てきます。これらは戦術を考える際に有効とのこと。

リアプライ=世の中に既にあるアイデアを応用する。
ストック=日頃から情報や知識、経験を蓄える。

また、戦略・戦術を生み出す際、それを実行する際には「コミットメント」が重要とのこと。これは当たり前のことではありますが、このへんをしっかりと書いているのが本書の素晴らしいところだと思います。本書の前半部分はUSJ復活までのストーリなのですが、その中でも、アイデアを生み出し実行する為には一貫したコミットメントが必要であるということが描かれています。

インスピレーション

その他にもぼくがインスピレーションを受けた箇所がいくつかありましたので書き留めておきます。

私は「奇跡」という言葉が好きではありません。ここに絶対辿りつこうと歯を食いしばって、執念でアイデアを振り絞って、皆と力を合わせてここまで来ました。

右脳的なクリエイティビティな閃きでアイデアを生み出すのではなく、論理や数学的な思考でアイデアを発想するのがイノベーションフレームワーク。

「リスクに挑戦して会社を大きく変革させるリーダーシップが取れるのか?」と聞いているのは明らかだった。

こだわるポイントが間違っている:技術の為の技術や、品質の為の品質は、価値がないと私は考えます。人の役に立つための技術であり品質のはずだから。方向性を間違えたこだわりと消費者とのズレを正すことはマーケティングの根幹の使命。

差別化という名の誤ったこだわり:USJとTDRの間には交通費3万円の川が流れている。両方のマーケットは分断されているので、差別化の必要が無い。映画だけのテーマパークも、大人だけのテーマパークも不必要に狭い。

価値を生み出すアイデアの切り口は、経験上ほとんどの場合は「消費者理解」の中に埋まっている。


Posted 2016-01-21 (木) 13:21  Updated 2016-01-23 (土) 1:10
Category: MARKETING   Tag:

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